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ICカードが傷つくだろ!

電車のコトを中心につらつらと。

SS×3

twitterのサブアカウントで書いてた短いお話をネタ帳代わりに置いていきます。興味のある方はどうぞ。いろんな路線の書いてます。 **京急大師線と京急本線

新しい時刻表をふと目にして、北総線行きの列車が増えたことに気付く。自身にはあまり関係の件だが、自社に関係するならば話は別だ。
「…随分増えたな」
京急大師線はそうつぶやいた。
「5月はこっちにあわせてもらったんだ、向こうの改正にももちろん付き合う義務がある」
京急本線はそうさらっと言うが、遅延が起きれば一蓮托生のこの関係、他の路線でもよく話なのだが、京急と乗り入れ路線の関係は5社にも及ぶ。
どこかが変わればみんな変わる。京急大師線はその関係をずっとやや不思議だと思っていた。自分があまり関わりないからなおさらだ。
「…お前たちはそうやっていつも遠出してしまうな」
京急大師線の言葉に、京急本線は少し面を食らった。まさかそのような言葉を年長者の京急大師線が、しかもさみしそうにつぶやくものだから、何かあったのではないかと少し心配にもなった。
しかし、その言葉は嘘ではなく、そして周知の事実だった。
「今回の改正ではお前も逗子線も…だ。いつも北総線方面に行くわけではないが、さすがに少しさみしくなる」
きょとんとした顔をして京急本線が話を聞いていたものだから、京急大師線はどうしたのかと少し不安になった。こういうことをいうキャラではないのはわかっているのだが。
「…っはははは!何だ、ビックリした!」
急に京急本線が笑い出したので、京急大師線は驚いた。やはりおかしなことを言っていたのだろうか。そう思っていると、京急本線がいつもの笑顔を見せる。
「さみしくなんかさせないさ。オレたちの家はここだから、必ず帰ってくるよ。だから…だから、大師線はオレたちの家を守ってくれてるとうれしいなぁ!」
すごくうれしそうな顔で京急本線が言うので、思わず京急大師線も笑ってしまった。ああ、また知らない間に成長している。否が応でもそう思わせられるのが京急本線だと、ずっとみんなを見守っていた京急大師線は知っていたのだ。
「でも、たまには大師線にも表に出てきてもらわないと!京成本線や北総線たちが会いたがっているよ。浅草線はたまに会えるからずるいって、ちっちゃなケンカまでしている」
親友たちの言葉をまた楽しそうに話すのが、京急大師線にはうれしかった。
「…ああ、検討しておこう」
「とか言って、なかなか出てこないくせに」
「…出てこなくなったのは向こうの金町線も同じことだろう…」
「人は人、うちはうちだー」
たわいもないやりとりも楽しいのは、きっと今が充実しているからだろう。
「…北総線や京成本線たちによろしく伝えてくれ。そして、新線開業、おめでとう…と。」
「ああ、伝えておくよ」
京急大師線は心の中に広がった青空に、一本の白い雲が走ったのを感じた。


**京急久里浜線とJR横須賀線

久里浜駅に掲示されている情報を確認するのが日課だった。今日も問題なく東京湾フェリーは運航されている。
「こんな晴れた日だ、運休するわけもないか」
真夏の透き通った青い空、今日も三浦半島は快晴である。海の向こうの房総半島もよく見える。
「さて、戻ろうかな…」
踵を返そうとすると、遠くからよく聞く声が聞こえてきた。
「おーい、横須賀線ー!」
「…久里浜線、どうした?」
京急久里浜駅の方からパタパタと走ってきた京急久里浜線は、片手に何か買い物袋のようなものを携えている。平屋の久里浜駅の前で、2人は向かい合った。
「何、もう戻っちゃう?」
少し息を切らして京急久里浜線が聞くと、横須賀線は「ああ、横浜でこれから会議があるから」と返す。
横須賀線は東京湾フェリーの運航状況をわざわざ久里浜駅まで赴いて確認している。それは、自分の中のだけのルールだった。
「そっかー。少し話とか出来たらよかったなーとか思ってたんだけど…仕方ないね」
「すまないな」
ふと横須賀線は京急久里浜線の持っている買い物袋に目をやった。中にはどこかで、いや、見慣れたものが入っていた。
「久里浜線、それは…」
「あ、これ?いいでしょ、本線たちに持っていこうと思って!」
「じゃーん!銚子電鉄のぬれ煎餅!東京湾フェリーの売店でも取り扱いを始めたのだ!」
よく見る袋を目の当たりにして、横須賀線は少しげんなりした。横須賀線は総武線と相互直通運転を行っているが、その運転先の駅でよくぬれ煎餅を見かけていたのだ。
よく赴く千葉方面だけでなく、ホームの横須賀にまで進出してくるなんて!神出鬼没過ぎる、ぬれ煎餅!横須賀線はぬれ煎餅をおいしいと思っていたが、さすがにここまでたくさん見かけると何とも言えない気持ちになる。
「…内房線にでも頼まれたのか?」
「うーん、そこまではよくわかんないや」
東京湾フェリーは神奈川の久里浜港と千葉の金谷港を結ぶフェリーである。その関係もあってか、京急久里浜線は海の向こうの内房線と面識があった。千葉に赴いている横須賀線は言わずもがな面識があるので、横須賀線は内房線が仕向けたのだと思ったのだ。
しかし、京急久里浜線が言うには誰が取り扱うように仕向けたのかよくわからない。別にかまわないのだが、何といえばいいのか、銚子電鉄は商魂がたくましいらしい。それは、よくわかった。京急久里浜線も千葉に赴くのでけっこうな頻度で見かけると思うのだが、そこは気にしないようだった。
「…一枚もらっていいか?」
「いいけど、どうするの?」
京急久里浜線から煎餅を一枚もらうと、横須賀線は踵を返した。
「京浜東北線にでも持ってってやろうと思ってな」
横須賀線は少し空腹を感じていた。


**北総線とJR常磐線

「小室、ひさしぶり」
小室と呼ばれて驚いた。振り向いてみればそこには昔世話になった顔がいつものようにタバコをくわえて立っている。ここは高砂、彼の走っているルートではないはず。直通相手の遅延に巻き込まれて慌てながら走っていたから、近くにいたことに気付かなかったのだ。
「じょ…常磐線」
「忙しそうだね、京急の遅延に巻き込まれた?」
くわえているタバコを唇で上下に揺らして遊びながら常磐線は器用に話す。
「どうしてここに…?」
「金町線に話をしに来たついでに。ちゃんと金町線に乗ってきたよ?高架になった記念」
「…きれいに巻き込まれました。昨日はそこまででなかったんですが」
「あららら、だいぶ乱れてるねぇ。やーらしい」
ニヤニヤと笑いながらちゃかす常磐線を見て、昔と変わっていないなぁと北総線は思う。
新京成線と直通運転をしていたころ、松戸でよく常磐線と話していた日々を思い出す。それはすでに過去の話だが、たまにごく最近の出来事のように思い出すことがある。まぁ、と常磐線が言葉を続ける。
「振り回されるのも悪くはないよね、けっこう大変だけど」
さっきとは違った笑みで常磐線は北総線を見た。ああ、このまなざしは「今を楽しめ」と言っているな、北総線はそう思った。
実際振り回されるのも悪くはないと北総線も思っていた。もちろんお客さんには悪いと思っているけど、自責ではないから仕方がない。
「そうですね。大変な分、相手側には恩をたくさん売っておきましょう。相手は大手私鉄です、悪い気はしませんよね」
そう言って笑うと、常磐線も再び笑顔を見せた。
「さすが京成の人間だ!そのあたりよくわかってらっしゃる!」
「さぁもう行かなくては。ここで遊んでいると、京成本線や押上線に怒られてしまいます」
「うん、頑張ってー」
ひらひらと手を振って見送る常磐線へ背中を向けて、北総線は歩き出した。
「明日、久里浜線や空港線に会ったら何て言ってやろうかな」
くすっと笑ったその時、遅れていた電車が入線してきた。
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