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ICカードが傷つくだろ!

電車のコトを中心につらつらと。

SS×4

またまたtwitterのサブアカウントで書いてた短いお話をネタ帳代わりに置いていきます。物置にしちゃってすみません。 **JR京浜東北線と金沢シーサイドライン

新杉田でいつもの顔を見つけたので、声をかけてみる。今日は金沢八景で見るいつものメガネがいないので、少し気になっていた。
「なぁ京浜東北線」
「ん、シーサイドラインじゃない。どうしたの」
京浜東北線はいつものベストを着ておらず、ネクタイもつけていなかった。それほど暑いのだろう。半袖のYシャツ一枚の京浜東北線は珍しかった。かくいう自分も黒のタンクトップ一枚なのだが。
「京急本線見なかった?」
金沢八景でいつも見るはずの京急本線が今日は姿を見せない。代わりにいつもはのんびりと仕事をこなしている京急逗子線が忙しそうに走っている。
「さぁ、ボクは見てないよ。根岸線も見てないって言ってたし」
いつもあれだけ京急本線をいじっているくせに、こういうところはドライなんだな、と思う。「あ、でも」と京浜東北線が続ける。
「東海道線が大森で見かけたって言ってたよ」
「…大森?」
シーサイドラインにはあまり馴染みのない地名だった。
「そうそう、シーサイドライン。いい加減根岸線にお金返してあげてよね。いつもツケばっかりで返してくれないって嘆いてたよ」
ぷんすか、と京浜東北線が怒る。
「はは、ちゃんと返すよ」と心のこもっていない返事をして、シーサイドラインはふむ、と考えた。何で京急本線は大森にいるのだろう。
「じゃあボクはもう自分のところに戻るから。いいね、根岸線に迷惑かけないでね」
シーサイドラインに向けてビシッと指をさし、京浜東北線は行ってしまった。
「…何で根岸線に対してはあんなに過保護っぽいんだろ…」
ふとした疑問を抱えつつ、シーサイドラインは踵を返した。そして思い出す。
「ああ、そうか。大森か。何かちょっと久里浜線に聞いたことがある」
そこには大切な人がいたらしい、とその人に会ったことがない京急久里浜線が話していたのを思い出した。定期的にそこへ行っては、現状の報告をしているらしい。
「いやー、あっついねー」
長く生きている者にはそれなりの轍がある。
自分はいつまでこうして海を見ながら走っていられるかはわからないけれど、この世に生まれたのならば最後の最後まで一生懸命走り続けていよう、と思った。
「今日もまだまだ頑張ろうー。夏休みに入ったから、お客さんどんどん増えるぞー」
シーサイドラインは走る、金色の髪を太陽にかざしながら。


**JR常磐線とJR京浜東北線

昔もらった感謝の手紙をひょんなことから発掘したものだから読んでいたら、会社のいたずらっ子に見つかった。
「あ、常磐線。めずらしー、手紙なんて読んでる!しかも少しボロい」
くすくすと笑われたので、読んでた手紙をそそくさとしまう。
「京浜東北線には関係ないから見せてあげない」
「何それー」
「もう20年くらい前の手紙だから古くもなるよね」
「20年前?」
もらったはいいけど照れくさくて「ありがとうっす」としか言えなかった。今もきっと同じだろう。まだ北総開発鉄道と呼ばれていた彼が、今まで世話になった感謝のしるしとよこした手紙。もう仕事で松戸に来ることはないだろう。
頑張っているなら余計な口は出さないでおく。これが自分のルール。
「月日が経つのは早いってことですなぁ」
「何じじいぶってんの」
「もうじじいだよー」
マイルドセブンを口に加えたら「ここは禁煙だよ」と言われたのでライターは出さない。
「はーい」
松戸に着いたら吸うことにする。


**京成本線とJR常磐線

夜になれば自慢の駅看板が一層キレイに輝く。新型スカイライナー、京成電鉄の看板特急列車だ。
「わぉ、こりゃ総武線がダダこねるわけだわ」
初めて新しくなった京成上野駅の駅看板を見て、常磐線は驚いた。
「ほぼ新幹線じゃん」
「京急のイベントで新型スカイライナーを見た子供が新幹線と言っていたよ」
背後から声がして振り向けば、京成本線が立っていた。
「子供は正直なものだ」
「あらっ、いつからそこに」
「常磐線の声がしたので、立ち寄ったまで。敵察か?」
京成本線がふっと笑った。
「オレがそんなことするように見える?」
「…見えないな、失礼した」
2人してクスッと笑う。
「我々にも誇りと負けられない意地がある」
「まぁそうだろうねぇ。でも敵は他にもいるんじゃない?」
「…それも重々わかっている。しかし」
京成本線がそこで言葉を止めた。
「?」
「私は全ての大切な仲間を守りたい。グループ会社だけではなく、仕事で世話になっている仲間もだ」
語気が強まる。京急と都営か、常磐線はそう思った。
「守りたいものはずっと守り抜く、苦しいときに支えてくれたものにはそれ以上の感謝の証をずっと」
京成本線の顔を見ることは出来ないが、想像はつく。
「ま、それはオレも同じだよ」
ニッと常磐線が笑うと、それを見た京成本線の口元がゆるんだ。
「…そうだったな」
「そして、ライバルに先を越されたら追い抜いてもっと先に行ってやらないと気が済まない」
「おっ、さすが京成グループのドン!言うこと違うね!」
常磐線がおだてるが、京成本線はそう簡単には乗らない。
「常磐線。これから飲みに行くか?」
「え、いいの?」
「君となら悪い気はしない…かな、たぶん」


**京急久里浜線とJR横須賀線

自社…と言っていいかはわからないが、「元」京浜電気鉄道の仲間以外の人を見るのは初めてだった。房総半島が見える久里浜で彼を見た瞬間何とも言えない気持ちになったのは、お互い戦争のためにここに来たからだろうか。
「東急」久里浜線が開業して半年後、国鉄横須賀線が久里浜まで延伸した。
「君が東急久里浜線か、よろしく頼む」
そう言って手を差し出して来た横須賀線の目は憂いていた。まるで可哀相な人を見るような目。悟っていたのかもしれない、自分たちの行く末が不透明過ぎて見えなくなってしまっていることを。
しかし不思議なものだ。彼も自分も線路の上をまだ、走っている。
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